平成16年度 「わの川だより」  平成17年2月8日

         「美しいふるさとの水循環推進プロジェクト」について
                                        青森県県土整備
                           河川砂防課長 神 豊勝

 県は、今後5年間で県と県民がともに進むべき方向を示すものとして平成16年11月、「生活創造推進プラン」を策定し、「いきいきと働ける豊かな社会」、「健やかで安心して暮らせる社会」、「環境と共生する循環型社会」、「安全・安心で快適な社会」、「青森の豊かさを知り、夢を持って未来を拓く社会」の実現に向け取り組んでいくこととしております。河川砂防課関係では、この5つの社会像のうち、「環境と共生する循環型社会」を実現させるべく「美しいふるさとの水循環推進プロジェクト」を平成17年度より強力に推進していくこととなりましたので、その概要をご紹介させていただきます。

 この「美しいふるさとの水循環推進プロジェクト」は、現在、河川、湖沼、沿海域で起こっている様々な問題が、人間の水や土地利用により自然に手を加えたことに起因しており、さらに森・川・海は、水・大気・土砂等の物質や生態系、人の生活でつながっていることから、それぞれ関わっている環境生活部、健康福祉部、農林水産部、県土整備部が別々に対症療法を施しても根本的な解決が難しいとの認識のもと、森・川・海の全体の概念である流域圏全体を水循環の視点から捉え、水循環に係る問題の本質を解明し、その問題がどのようにすれば解決され、それによって地域の人々の暮らしがどのように良くなるのかをビジョンとして示し、関係部局が地域住民と協力して水循環の健全化のために協働していくものです。

 わかりやすい例を上げたいと思います。たとえば、家庭の主婦が水と関係を持つのは、水道の蛇口から水を出し、料理、洗濯、掃除をしたり、トイレを使うことでありますが、その水がどこからきて、その後、その水がどうなるか、などと考えることじゃないかと思います。しかし、水は蒸発、降雨、表流水、地下水、人工水路の流れ、人を含む生物の体内の流れなど様々な形態を取りながら繰り返し地球の表面部分を循環しているもので、この主婦が何気なく蛇口から出したその水は、このような長い道のりを経てきた水なのであります。この主婦が何も考えず流してしまう料理屑、洗剤、また、道ばたに落ちている吸い殻、空き缶、ビニールゴミ等は川に流れ込み、水に溶け込みながら下流に下っていくし、川の下流ではこの水を使い米や野菜を作っているし、海では魚介類が生息しています。

 ところで、これまでの調査で、ビニールゴミは分解しある種の環境ホルモンとなることが分かっています。現在までのところ、環境ホルモンの目に見える影響は魚の雌化でありますが、この水を使って生産されている農作物は本当に安全なのでしょうか。そのような農作物を本当に食べ続けていいのでしょうか。環境ホルモンに限らず、今後も一人一人が水循環系を意識しないまま、生活を続けていいのでしょうか。

 このように水循環系に関わる問題は日常生活においてなかなか把握するのが難しいのですが、ここで対応を怠っていると取り返すのに非常な困難がついてしまうものであります。しかし、この主婦を含む我々みんなが、自らも水循環系の一部であり、自分の行動が水循環系に影響を与え、それがみんなの生活に影響を与えているということに気がつき、水循環系を健全化させることがひいては、自分自身を健全化させていくことであることを理解し、自らができること、この主婦の場合は「ゴミを出さない、拾う」、「合成洗剤を使わない」、「節水する」等の簡単な行為を積み重ねることによって改善されるのではないでしょうか。

 水循環系健全化のカギは、住民一人一人の意識の改革、生活様式の改善にあります。環境、水循環の問題は、このように住民一人一人の小さな日常行動の積み重ねや通常の企業活動によって起因していることから、その解決のためにはどうしても県民の協力と協働が必要であり、そのためには一人一人の理解が不可欠となります。したがって、流域圏の現状を体系的に把握した上で、納得できる理屈に基づいたビジョンを示し、行政、一般県民、農漁業者、各種企業等すべての人々のパートナーシップにより問題解決を図ろうというものです。

 幸い青森県では、良好な水環境を目指す一般県民と、生産者であると同時に直接良好な水環境づくりを行う農林水産業者の間には、一般県民からの水質改善等の協力により、農林水産業者はより安全安心な食料の生産ができ、一般県民はその安全安心な食料を享受でき、それにより青森県の農林水産業が繁栄し、それが各種企業に影響を与え、経済に好循環を生むという関係があります。

 今後すべての人々のよりよい水循環系に対する理解をもとに、このようなパートナーシップを培っていくことにより「環境と共生する循環型社会」が実現され、豊かな自然・水環境の中で、それぞれの時間を創り上げていく喜びを実感できる「生活創造社会」を目指していきたいと思いますので、皆様のご協力よろしくお願いします。 

平成10年度〜16年度の活動

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